第1回 JASA国際化推進ワークショップ 開催報告

Bulletin JASA

国際委員会「JASA 国際だより」
第1回 JASA国際化推進ワークショップ 開催報告

「オフショア・ソフトウェア開発の展望」
~委託側と受託側の相互理解を深めるために~

大津 健二

JASA国際委員会では、第1回国際化推進ワークショップを開催いたしましたので、概要を報告いたします。

2月10日(木)15:00~17:30 東実年金会館4階会議室で開催され、聴講参加者は約50名で盛況に行われました。

講演は以下プログラムで進められました。

~開催挨拶~
河井 研介 氏 [JASA国際委員会 委員長/東芝システムテクノロジー(株)顧問]

~基調講演~
「オフショア・ソフトウェア開発の進化・深化・親化を目指して」
辻 洋 氏 [大阪府立大学大学院工学研究科 教授]

~事例紹介~
1.「海外生産展開」
天野 武正 氏 [東信電気株式会社 EMS営業部 部長]
2.「当社企業グループの海外市場展開~中国合弁企業機能の活用」
松尾 康男 氏 [東洋電機株式会社 代表取締役社長]
3.「ブライセンが経験した海外事業」

藤木 優 氏 [株式会社ブライセン 代表取締役社長]

~閉会挨拶~

大橋 憲司 氏 [JASA東京支部 支部長]

~交流会~

各講演内容を簡単に紹介します。

●河井国際委員長より
オフショア開発は1人月いくらだけの単眼的尺度だけで考えるとうまく行かない。12月に開催した「JASAグローバルフォ-ラム2010」での台湾、ベトナムの紹介や、今回講演いただく中国や米国、ロシアの話など、なるべく広く色々な側面からの失敗を含めた現場のお話を聞く中で、皆様のオフショア開発のヒントを得てください。
と挨拶がありました。

●基調講演・辻教授より

(株)日立製作所勤務時代の1980年代後半にカーネギーメロン大学で、現在のCMMの原型を学んだ経歴から現在に至るまでの経緯についてのお話からはじまり、大阪府立大学大学院経営工学科で2005年~2009年に進められた「オフショアに関する産学協同研究」のプロジェクトについて詳しく紹介された。このプロジェクトは、日本、米国、中国、台湾、ベトナムの大学の調査メンバーと産業界5社の協力で進められました。産業界の様々なオフショア事例について、「委託するソフトウェアに関する特性」、「ベンダーに関する特性」、「プロジェクトに関する特性」に分類し、それぞれにいくつかの属性項目を設け、且つ、その属性の重要度の効用値を数値化して分析された結果は、大変興味深く参考になる内容でした。

~事例紹介~

●東信電気(株)天野様からは、
1989年に先代会長の強い思いで香港に進出した第一段階、94年からは中国合弁会社への生産委託を始めた第二段階、2001年からは深センで自社工場生産を始めた第三段階と進み、現在に至るまでの貴重なご苦労話を発表いただきました。特に通関(税関)でのトラブルや盗難事件などの生々しいエピソードは、中国ならではの難しさを改めて感ずる内容でした。

●東洋電機(株)松尾様からは、
先の発表の東信電気様と同じように、創業者の強い思いによる中国進出で、1980年代から中国との技術交流、90年代の日中合作会社設立、2004年からは合弁企業を設立して中国委託生産を開始し、現在の現地生産・現地販売に至る、成功までの長い期間の経緯について縷々ご紹介頂き、中国現地の提携交渉や販売、雇用の難しさや解決策など、参考になるお話でした。

●(株)ブライセン 藤木様からは、
2001年から現在に至るまでの、米国シリコンバレーにおける現地企業とのケースツール代理店契約、おなじく米国ユタ州企業とのBluetoothの代理店契約、韓国企業とのウイルス対策ソフト代理店契約、デンマーク企業とのワイヤレスサーバー代理店契約、ベトナム支社開設、米国デンバー企業との組込みデータベースソフト代理店契約など、数々の海外取組みを行い、成功事例、失敗事例全てを語っていただき参考になる内容でした。

●最後にご挨拶に立ったJASA東京支部・大橋支部長からは、今日の講演を聴きオフショア成功のポイントは現地で働く人の事情を知り、現地の人の工夫を取り入れた経営を行う。そのためには日本と同じようにコミュニケーションの重要性が必要と言う事を痛感した。とお話がありました。

講演会終了後、講演者の方々と聴講参加者の方々が集まり交流会が行われました。海外展開の難しさや対処ノウハウなど、更に深く情報を交換する良い機会となり盛り上がった会合となりました。