ベトナム視察ミッション参加報告

Bulletin JASA

国際委員会「JASA 国際だより」

ベトナム視察ミッション参加報告

アルパイン株式会社
秋保 政一

情報サービス産業協会(JISA)からの誘いを受け、JISAベトナム視察ミッションに、組込みシステム技術協会(JASA)の国際委員会から委員長の河井研介氏と小生の2名が参加した。ホーチミン市で開催されたJapanICTDayへの参加をはじめ、Quang Trang Software City(QTSC)やTanThuane-OfficePark(TanThuan輸出加工区)の視察を含め、ホーチミン市とハノイ市のベトナムIT企業12社を訪問しベトナムのIT企業の現状を見聞したので、その内容を報告する。

JAPAN ICT DAY 2010 参加

Japan ICT Dayとはベトナム、日本のIT企業間の相互理解を深めビジネス協力を推進する事を目的に、ベトナムソフトウェア協会(VINASA)の主催により毎年開催されているフォーラムである。

今年はホーチミン市郊外のQuan Trang Software Cityにて9月27日~28日にわたり開催された。始めに主催者VINASA挨拶、ベトナム情報通信省大臣ならびにJETROからの来賓挨拶が行われた。引き続きVINASA IT HR(Human Resource System)に対するVINASAと情報処理推進機構(IPA)の協力に関するMOU調印式が行われ、IPAからは小川参事が出席された。セミナーセッションでは、ベトナムIT業界概要報告ならびに日本IT業界概要報告が、ベトナムMIC Nguyen Trong Duong理事とJISA国際委員会杉山委員長より行われた。また午後のセッションではJASA国際委員会河井委員長が講演を行った。その他ベトナム代表企業からの企業紹介が多数行われ、盛況な内容となった。

大臣スピーチは、2011年から2015年にかけてどのようにソフトウェア産業を育成して行くかの方針について詳細に述べられていた。また杉山委員長のスピーチはオフショアアウトソーシングを中心課題とし、調査会社を使った詳細なデータ分析による内容で、大変参考になった。河井委員長のスピーチは、JASAの紹介、特に国際委員会がどのような活動方針で海外協会とのコラボレーション進めているかを説明した。

翌28日の午前は、VINASA主催で我々日本からの訪問団とベトナム企業とのビジネスマッチングミーティングが行われ、ベトナム側からは11社が参加した。

ベトナムIT企業訪問

ホーチミンで7社、ハノイで5社、あわせて12社のベトナムIT企業を訪問し、ベトナムのIT業界の現状の一端を把握する事が出来た。但し、組込み系の仕事をやる企業はまだごく一部に限られるようである。訪問企業は、次の通り。

ホーチミン企業(26日~28日訪問)
・Individual System  ・TMA Solutions   ・Global Cybersoft
・Renesas  ・HPT Vitnam Corporation
・Fuji Computer Network Company  ・ISB Vietnam Co

ハノイ企業(29日~30日訪問)
・esoftflow  ・Tinhvan Outsourcing  ・FPT Software  ・Luvina Software  ・Runsystem

ベトナム 概要について

人口は現在約8,600万人。 26歳付近の戦後世代に年齢ピラミッドのピークがあり、全体として活力に溢れている。2020年には日本の人口と逆転する事が予想されている。

ASEAN諸国内にあってもベトナムはコストメリットの有る地域として捉えられており、域内での棲み分けが加速。2007年にWTOに加盟し市場の開放と外国資本100%の企業法人化が可能となった。IT産業に関しては、WTO加盟に先がけ2003年より特例により外資の参入が認められていた。

2009年以降市場(消費地)としてのベトナムに注目が集まり、日系食品業界や二輪車/自動車の販売子会社の設立が増加している。2010年より携帯電話の3Gサービスが開始されコンテンツサービスが始まったが、国営携帯電話キャリアのためか課金システムの構築/整備に課題がある。

ベトナム ICT(Information & Communication Technology)企業動向について

ベトナム企業推定全800社中、IT企業は50社を下回る。政府・共産党としてIT産業の発展に大きな期待を寄せている。最近のベトナム IT企業の平均成長率は30%と高成長を維持しており、日本と北米向け売上げが多い。

IT企業の多くが専用の開発ツールを必要としないソフトウェア開発領域での海外向けオフショア開発を主事業とし、基幹システム、WEB、携帯などのアプリ開発やBPOに従事している。このためICEや開発ターゲットボードなどの専用ツールが必要となるケースが多い組込みシステムオフショア開発は、一部企業のみで限定的である。日本の開発委託元が、ICEや開発ターゲットボード等の開発ツールを提供すれば良いとも考えられるが、輸出入規制等の課題もあるようで、充分な準備検討が必要となる。

一部の大企業を除き各社100名前後の技術者により構成された企業が多い。平均的なベトナム IT企業の技術者一人当たりの年間売り上げは130万円~200万円で、オフショア開発コストとしては日本国内コストの概ね1/4~1/3と考えられる。多くの企業はCMMI Level 3が標準的管理レベルとなっている。

ベトナムにおける IT技術者教育の例

ベトナム最大の IT企業 FPTコーポレーションが、中国などのソフトの事例を参考にFPT University を2006年に設立した。

ホーチミン市郊外のQuang Trang Software City(QTSC)と、ハノイにキャンパスを持ち現在3000名の学生が学ぶ。計画では2013年には15000人の学生が学ぶ巨大な教育システムとなる見込みである。ベトナムでの IT企業の実態を反映し英語、日本語の教育にも力を入れている。

今回ホーチミン市、ハノイ市双方のキャンパスを見学する機会を得たが、教育レベル、カリキュラムは実務教育に力点を置いているとの印象を持った。

おわりに

今回の視察ミッションを通じ、JASAとしては組込み系のオフショア開発やビジネスコラボレーションなどに関する基本データをもっと整備すべきであると感じた。また、組込み分野で海外協会と協調する際に、JASAの存在感をもっとアピールできるように十分な準備をして行きたい。

末筆になりましたが、今回の視察ミッションにお誘いいただいたJISA国際委員会に深く感謝いたします。

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JASAグローバルフォーラム
~台湾・ベトナム企業とのコラボレーションを探る~
12月2日(木)13:00~16:30
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第1回JASA国際化推進ワークショップ
2011年2月10日(木)15:00~19:00
東実年金会館 会議室(東京・中央区)●基調講演 : 大阪府立大学大学院工学研究科
教授  辻 洋 氏
『オフショア・ソフトウェア開発の
進化・深化・親化を目指して』
●事例紹介 : 企業3社
●交流会※詳細は、JASA主催イベントをご覧ください。